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7. 出生の秘密
「あぁ、こんばんは。岡松さん、いきなりで申し訳ないのですが二人で話す事は出来ますか?」
真琴君のお父さんは、とても紳士的な方だった。
けど、どこか悲しい人にも見える⋯。
「あっ、はい出来ます。」
そんなこんなで、また真琴君のお家にお邪魔し、客間へと案内された。
「座ってください。」
「は、はい。」
とてつもなく、偉大な雰囲気が感じ取れる⋯。
「岡松さん、単刀直入に聞きますがあなたのお母さんの名前は何ですか?」
本当に、いきなり過ぎる⋯。
「えっと、岡松咲百合です。それがどうかしましたか⋯?」
「やっぱり、そうでしたか。道理でお顔立ちが咲百合に似ていると思いましたよ。」
「あの、母とお知り合いなんですか?」
気になり、聞いてみる。
「そうですよ、ずっと前からの。
実は、咲百合と私は幼馴染です。家が近くで良く遊んだりしていました。そんな時、俺は彼女を好きになってしまったんです。
どうしても、この気持ちを抑えきれず告白をしました。すると、彼女は快く私を受け入れてくれました。
そして、二十歳になった頃。
私と咲百合の間に子供を授かったんです。それが、真琴なんですよ。
これは、まだ真琴は知らない事実。だから、今のうちに真琴と別れてくれませんか?」
(今日、付き合ったばかりでしかも父親違いの兄弟がいる⋯。驚く事ばかりだけど、私は⋯!)
「そんなの、嫌です。私は真琴君と居たいんです。例え、兄弟だったとしても真琴君以外有り得ません。それに、この恋をどうするかなんて火龍さんには口出しされる筋合いはないと思います。
なので、ごめんなさい。失礼します。」
私は、荷物を持って外へ急ぎ足で家を出た。そして、真琴君の手を引っ張って歩き出した。
途中、
「やっぱり、似ているな君は⋯あの人に。」
と言う声が聞こえた気がしたけれど、聞こえていないふりをした。
「おっ、おい。どーしたんだ?父さんと何を話したの?」
まさか、真琴君と異父兄弟だったなんて⋯。
「どっ、どーしよう。真琴君、私達異父兄弟なんだって。」
「え?えーーーー!!」
「でも、まさかこんな事があるなんて⋯。」
しばらくして、家の近くにある公園に寄り道をした。
「萌寧、俺は血が繋がっていたとしてもこの関係を続けたいと思ってる。それに、俺は君が好きだからこそ諦めたくない。」
「真琴君⋯。
そうだよね、例えどんな事があったとしても私達はもう二度と離れたくないもん。」
「あぁ、そうだね。俺達の絆はそう簡単には切れないんだから。」
しばらくして、話を終え私の家に着いた。
「真琴君、今日はありがとう!とっても楽しかったよ!」
「俺も、楽しかった。ありがとう!
あ、あとこれクリスマスプレゼント。一日早いけどね。」
「あ、ありがとう!すっごく嬉しい⋯。
あの、実は私からもプレゼントがあるの。」
はいっと、ラッピングした袋を真琴君の手に渡す。
「ありがとな萌寧。」
「うん、こちらこそ。じゃあ、良い冬休みを〜!」
「ありがと、じゃあな!」
そして、見送ったあと家に入った。すると、
「萌寧、ちょっと話があるわ。座りなさい。」
どうしたんだろう⋯。
「ど、どうしたの?」
「真琴と火龍さんに会ったそうね。」
「あ、うん。」
「それで、真琴とはどういう関係なの?」
「その⋯恋人だよ?」
「嘘でしょ、今すぐにでも別れなさい。あの人達といたら、あなたまで不幸になってしまうわ。」
「いやだよ、お母さん。どうして、お母さんまで、そんな事言うの?」
「それはね、真琴は私と火龍翼との子供なの⋯。それは、もう知ってるのよね?」
「うん、火龍さんから聞いたよ。」
「それと、もう一つ言ってなかった事があるのよ。それはね、萌寧。私は、あなたの実母では無いのよ⋯。」
「えっ、どういう事⋯⋯?」
(嘘でしょ⋯。)
「あなたは、私の姉である陽奈の娘なの。だから、私は叔母に当たるのよ。」
「そ、そうなんだ⋯。私が陽奈さんの子供だったんだ。」
(ずっと、陽奈さんの子供は、行方が分からないと言っていたけど、本当は私には伏せておくために嘘を⋯。)
「今まで、萌寧を騙しててごめんなさい。」
「ううん
話してくれてありがとう、今までずっと言いずらかったよね⋯。
でも、一つだけ聞いてもいいかな?」
「えぇ、いいよ。」
「どうして、陽奈さん⋯お母さんは、今居ないの?」
「⋯⋯。
それはね、あなたがまだ陽奈のお腹の中にいた頃に交通事故で亡くなってしまったからなの。その時に、萌寧は帝王切開で産まれ助かったんだけど⋯。陽奈は、もう助からないかもしれないってお医者さんに言われたの。
その時、陽奈に頼まれたの。この子をあなたが守ってあげて欲しい⋯お願いって。だから、萌寧には黙ってここまで育ててきたの。
もっと、早く言っておけば良かった⋯本当にごめんなさい。」
頭を下げる母を見て、私は
「頭を上げてよお母さん私にとってあなたはかけがえのない存在なんだよ!例え、本物じゃなかったとしても、私の中ではいつまでもお母さんなんだから。それに、血は繋がっているよ。
だから、そんなに謝らないでよ。」
「萌寧⋯。ありがとう。」
そう言って、抱きしめ合ったお母さんと私の間には更に深い絆が結ばれたような気がした。
「そういえば、私って後から生まれたのにどうして真琴君と同級生なの?」
「それは、私が真琴を妊娠し始めていた頃。翼の家柄上別れないと行けなくなって、なおさらお腹にいる真琴の事を言えなくなった。
そんな時、今のお父さん、岡松太陽と出会い再婚して萌寧の父親になったの。お父さんは、元々陽奈の旦那さんだったんだけど、萌寧には血の繋がった父親が必要だって事になったんだよ。
そしてある日、病院へ行くと翼との子供がお腹の中で育っていると言われたわ。
それで、あなたが陽奈のお腹から出てくる時に、私も同じ日に真琴を産んだの。だから、二人とも同じ、七月七日に生まれ同級生になったのよ。」
「そうだったんだ⋯。私と真琴君って運命の相手だったりして〜。」
冗談交じりに、さっきの別れてほしいと言う意見をまだ持っているのか確かめてみた。
「そうかもね、あなた達の幸せを見守るのが私の役目なのに、別れさせるのは間違っていたわ…。
ごめんね、真琴と幸せになるのよ。」
「お母さん⋯。うん、ありがとう!」
そして、私達の交際は無事認められた。翼さんをお母さんが説得してくれたお陰でもある。
ー私は、世界一の幸せ者だよ⋯。
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