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第2話
それから五分後。
麻紀と彼氏が互いに首の後ろや背に手を回して、唇を食んでいる時、突然玄関のドアを叩く音がした。それは、ドアをノックするなどと言うレベルではない。
思わず身を竦め、二人とも玄関の方を見た。しかし、動き出す前に、音の答えが分かる。
ドアが、斧で突き破られた。
轟音がして、埃が舞って、更に彼と麻紀は身を竦める。橙色の髪をした少女が、破損したドアを跨ぎ、自分の体より大きいような斧を引きずりながら歩いてくる。
グリーンの大きな双眸に、涙をいっぱい貯めて。
「あ、アゲルディ……ちゃん」
麻紀が少女の名を呼ぶと、少女はゆっくりと首を擡げる。
般若より恐ろしい顔つきだった。
「嘘吐き」
アゲルディは、思い切り、どこにそんな筋力があるのかという勢いで、斧を振り上げた。
「麻紀ちゃんのこと、お友達だと思ってたのに! 大事なお友達だと思ってたのに……嘘は絶対許せない。お友達は嘘なんか吐かない。麻紀ちゃんはもう、お友達なんかじゃない!」
次の瞬間、麻紀の脳天に斧が突き刺さるのを、彼氏はすぐ横で見たのだという。血は最初、割れ目からじわりとあふれ出して、それから激しく噴き上げた。
まぁ、その数秒後に、彼も同じように、友情より恋愛を優先させたという理由で、頭をかち割られることになるのだが。
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