愛夜盗り

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食事とアルコールを嗜みながら、ローテーションで変わって行くシンガー達の曲を楽しみながら、会話していると⎯⎯。 いよいよ……お目当てのモルフォが現れる⎯⎯。 女性と見紛う様な中性的な綺麗な顔立ち、小柄で華奢な体はほっそりとしていて、『女性』と言われたら信じてしまいそうな程に甘美で艶やかであり、ミステリアスな雰囲気を持っている。 女性には不自由しないだろうに……。 ミルクティーの様な色合いの茶色く短い髪をオールバックにした、真っ白い肌に海の様な青い瞳が、まさに『モルフォ』をイメージさせる。 仕立ての良いスーツを着こなし、黒のレザーグローブ、左耳に光るピアスが彼の妖艶さを更に引き立たせている。 会場内に、静かで穏やかでありながら、透き通る様な声が響き、そのミステリアスな雰囲気に皆が手を止め、注目する。 突き刺す様な真っ直ぐな視線が、会場内の観客を捉えると、観客達は硬直して動けなくなり、息をする事さえ忘れてしまう。 ⎯⎯彼女でさえも。
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