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モルフォの視線が、僕に向けられている気がする。
⎯⎯気の、せいか?
隣の彼女を見ると、彼女はモルフォを熱い視線で見ている。
他の人達もそうだ……。
皆がモルフォに注目し、うっとりと、歌に酔いしれている⎯⎯だけど。
何故かモルフォは、彼女でもなく……他の人達でもなく……何故か僕を見詰めてくる。
歌いながらも、僕に視線を外さない。
海の様な青い瞳が、僕を捉えて離さない。
綺麗だとは思う。
青い瞳も顔立ちも……もちろん歌声も。
僕だって、彼に釘付けだ。
⎯⎯だけど……見すぎだよ……何だか気恥ずかしい。
そんな気恥ずかしく気まずい空気感が支配していた時間が終わりを告げる⎯⎯。
どうやらモルフォの番が終わったみたいだ。
「はぁ~……素敵だった。
来て良かったね?」
「う、うん…歌も良かった」
嬉しそうに話す彼女に、歌の半分も聴いていなかった…とは言えず、それと無しに、話を合わせた。
「帰ろうか?」
会場を出て、エレベーターに向かおうとした廊下で……バックヤードから出て来たモルフォと鉢会う。
「あ、モルフォさん」
彼に気付いた彼女が走り寄って声を掛けた。
「先程は、素敵な歌、ありがとうございました」
「いいえ。
お客さんに喜んでもらえたなら、それだけでも充分に嬉しいです」
目をキラキラさせて、モルフォを見上げる彼女は可愛い……もしかしたら、あの噂は間違いで、彼女を狙ったりしていたら……。
なんて、心配したが。
「今日はお2人で?」
「はい、彼と一緒に」
彼女が手招きして呼ぶので、僕は隣に立っておじきする。
「初めまして、モルフォさん。
先程は、素敵な歌ありがとうございました。
噂には聞いていましたが、本当に素敵な歌でした」
「ありがとうございます」
プロシンガーとして、純粋に嬉しいのだろう、真っ白な頬がほんのりと紅潮する。
「ご自分で作られるんですか?」
「ええ、毎回」
「凄いですね、あんなに素敵な歌を作られるなんて」
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