2-fool

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2-fool

ーーーおれ、数学ちょっと好きになれるかもしれない…今日の補習、出てよかったなぁ〜。 自習室から出て帰宅しようとする千羽の足取りは、補習前の重いものとは打って変わって軽やかで。 ーーー名取場、ってほんといいやつだなぁ〜人に教えたりするの好きなのかな?家庭教師とか塾の先生、とか向いてそう。 そんなことを考えつつ今にもスキップしそうなほど、上機嫌で帰宅しようとしていた、その時。 体育館前を通り過ぎたところで、ある声に呼び止められる。 「おーい!(わか)!わぁ〜〜かぁ〜〜!」 「???」 自分のことを下の名前“若也(わかなり)”のうえだけとって若、呼びするのはこの学校で1人しかいない……そう思い振り向く。 「あぁ……なに?(れん)」 そこに立っていたのは、男子バドミントン部所属の烏合 蓮(うごう れん)だった。小学校からの幼馴染の蓮は、手首に付けたリストバンドで額をごし、っと拭いて千羽に駆け寄る。 「なに?じゃなくてさぁ…。 なぁ、ちょっとバド部寄っていけよ。人足りなくてさぁ…ミニゲーム、出てくれない?俺とダブルス組んでよ」 小学校からの幼馴染の蓮は、同じ高校へ進学が決まった千羽をいつも気にかけこうして話しかける。 「ええ〜〜?嫌だ……。 俺、ラケットもないしまず第一この格好だよ?動きにくいって」 体操服も何も持ってきてないよ、と通学カバンを持ち上げてアピールする。 「ラケットなら俺のスペア貸すって!シューズもあるし。 格好なんて……若、お前なら余裕だろ?制服のままでも」 「ええ〜〜〜…」 「いいからほら!1setだけでいいからさ!」 早く家に帰って先ほど名取場に教えてもらった難解な数学の公式をおさらいしないとなのに、そう思いながらも……千羽は、実は押しに弱いタイプ。 好きなこと嫌いなことははっきりしてる割に、こうして来られるとズルズルと……いつもわりと強引気味な蓮に結局断りきれず、腕を掴まれ体育館の中まで引き摺られていく。 「若、お前前衛(まえ)でいい?」 「あー…うん。 ほんと、1セットだけだからなぁ?」 「わかったわかった!はい、ラケット」 体育館内、バドミントン部が占領する1/4スペース、ネットの前に千羽は渋々立った。 蓮から渡されたバドミントンラケットのグリップをぎゅ、と握る。キツめに張られたガットの交差する糸を左手掌でぽん、と叩き、中腰に構える。 「千羽くん、久しぶりじゃん!よろしくな〜! じゃ、烏合・千羽ペア。サーブ権そっちで」 相手側のコート、バドミントン部の同級生が笑顔でそう言って、シャトルをポーンとこちら側に投げ入れた。 千羽は頷くと、白い羽付きのシャトルを持ち上げラケットを持つ手首を軽く返す。 「パシュッ!」と鮮やかな音が響いた。
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