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1-fool グッジョブ毛虫
「ありがとう!ほんと助かったぁ〜〜。
水やりなんて普段しないからさぁ…ホースの使い方わかんなくって。
あやうくここ、プールにしちゃうとこだった〜あははは!」
「えっ??ああ、うん……?…」
(ホースの使い方ってそんなわからないものか…?な、謎だ……)
「てかこれ、なんで外れたんだろ…。やばい。先生怒るかなぁ…」
千羽は力任せに、外れた散水ノズルをホースの先に付けようと手に持ちグイグイ押し付けるが、案の定うまくいかない。
「ーーー…貸してみて」
名取場はそのホースを千羽の手からそっと取り,ノズルのジョイント部分をぐい、とずらしホースに取り付けた。
“カチッ!”と音がして、うまく嵌め込まれたことがわかる。
「ーーー…これで、多分大丈夫」
名取場がホースを手渡すと、千羽は目をキラキラと輝かせている。
「………すっげぇぇーーーー!!!
え、直したの?どうやって!?いまの一瞬で!?すご!天才じゃん!?」
突然の大声と、注がれる羨望の眼差し。
「え、いや……そんな、簡単だけど……」
名取場は予想外の反応に動揺する。
「おれ、千羽!千羽若也。
きみは?
何年何くみ何ばん!?」
「えっーー…あーー…、俺、は、
1年の、
なと……」
「っああぁぁぁーーっ!!ちょっと待って!
黙って!うごかない!ストップ!」
「!??」
すべてを遮る千羽の突然の大声に名取場が驚いた瞬間。
すぐすぐ目の前に、背伸びをした千羽の顔が見えた。
ーーーフワッ……
(えっーー!?ちょちょちょ、っと顔、近っ…、待ってなにす)
手を伸ばし、名取場の頭に触れるーーー…
『ベシィッ!!』
「うぐぅ!」
頭を力任せに思い切り叩かれて、結構な振動に名取場は変な声を出す。
「っ!?!?」
(な、なんだいまの…まるで猫パンチ、いや犬パンチ……!?
え、なんで俺、突然頭はたかれたのいま…!?)
ーーーポトッ…
ふと黒く小さい何かが地面に落ちたのが見えた。
「ーーー……???!」
「はぁ〜〜〜、危ない危ない。
ーー…ほら、頭に毛虫ついてたよ?
それさ、確か毒蛾の幼虫だから…さわったらかぶれるんだよ。俺昔刺されたことあって…肌真っ赤に腫れてえらいことになったんだ…」
「えっ………け、毛虫?」
地面に落とされた毛虫はウヨウヨと元気に動いている。
真っ黒な姿に刺々しい針で覆われた、いかにも刺されたらやばそうな見た目のその毒蛾の幼虫の姿に、名取場はぞぞぞっと身震いする。
(こんな危なげなものを頭に引っ付けてたのか…俺?っていうかーー…)
ふと上を見上げる。
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