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ーーパシュッ!
「20マッチポイント14!」
ーーキュキュッ
「……ふぅっ」
ーーーパシュッ!
『ピーーーーッ!』
「マッチウォンバイ烏合・千羽ペア!21-14」
審判役の生徒が笛を吹き、手を伸ばして試合終了の合図を出す。
「……やりぃ〜〜若。」
蓮が掌を上げ、フゥッと息を吐く千羽へハイタッチを要求する。
パンッ!
「はぁ、久しぶりだから疲れたぁ…結局2ゲームしちゃったし」
千羽はそう言いつつコートの隅のシャトルを拾うと、先程まで撃ち合っていた相手チームの部員へと手渡す。
額にほんの少しだけ滲んだ汗を半袖シャツの肩の布地でくい、と拭った。
「サンキューな、若。……やっぱ、お前とだとやりやすいわぁ……。
若とのダブルスが一番合ってるんだよな俺」
体育館の端に移動し、蓮から借りたトレーニングシューズから上履きへと履き替える千羽。
「蓮は上手いんだから…誰とでも大丈夫だって」
「いやそんなことない。相性ってあるじゃん?若、お前ならわかるだろ。
……なぁ?やっぱりさぁ、男子バド部入れよ。若、おまえ、勿体無いって」
千羽はその言葉に、中学の時の部活動を思い出す。
幼なじみの蓮と共に、バドミントン部で練習に明け暮れた日々。
ラケットのグリップを握ればワクワクと心が躍り、手首をかえすたび張られたガットの奏でる風の音と、肌に当たるその小さな感触がとても気持ち良くて。
跳ね飛ぶシャトルを追いかけコートの端から端までジャンプできるのでは無いかと思えるくらい、小柄で瞬発力に長けた身体はいつも、生き生きと喜んでいた。
「中学ん時みたいにさぁ…一緒にやろうぜ?
俺と若のダブルス、負け無しだったじゃん。ほら、さっきだって。
ーーーなぁ、若」
「…………」
確かに、バドミントンはとても楽しい。
しばらくぶりのミニゲームで、準備運動も無しでしかも制服のまま……
どうなることやらと思ったが、自分でも驚くくらい身体は軽く……まだまだ現役、と胸を張れるほどの俊敏な動きをやって見せることができた。
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