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ーーガラッ
「すみません、遅れました」
ドアを開けて教室内に入ってきた生徒の姿に、千羽は目を向ける。
そこに立っていたのは、黒縁眼鏡をかけた長身の生徒。
彼の名は、名取場 千里。
黒髪におとなしめな雰囲気を纏う、どちらかというと優等生のような印象を受ける彼は、すぐにおちゃらけるフワフワした雰囲気の千羽とは対照的に見えた。
(違うクラスのやつかな。初めて見たーー…)
まじまじと見つめる千羽の視線に,一瞬だけ目を合わせた名取場は、すぐにフイッと目を逸らす。
(ん?……なんか、ちょっとやな感じ〜〜?)
クラスは違えど同じ学年、しかも同じ補習を受ける仲間なんだから少しは親近感持ってくれたっていいじゃん、と思いつつ……千羽は少しむすっとして身体を黒板の方へ向ける。
「ーーああ、16時20分開始だから…まだ1分前だ、大丈夫だぞ。
えーと、1Cの名取場だな。
……ん?名取場……。
名取場、お前、数学補習か?」
不思議そうに数学教師が確認する。
その確認の意味を、千羽にはまったく理解できず。
「ーーはい。よろしくお願いします」
名取場は眉ひとつ動かすことなく静かに答えると、入り口近く、後ろの席にガタタッ、と着席した。
「あ、あれ?
先生、おれには補習16時10分からって言ってたんじゃ…?」
「お前は嘘でも早く言っとかないと本当に遅れてくるからなぁ〜〜?
なぁ?遅刻常習の千羽くん。
……よし、じゃあ始めるぞー」
数学教師が教科書を開き、手にチョークを握る。
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