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(念願の…千羽くんと、同じ補習授業ーーー…)
クラスも違い、所属の部活も運動部と技術部と異なるふたり。
名取場が愛しの千羽と接点を持つにはーー…この方法しか思いつかなかった。
(今回の小テスト、先生の決めた赤点設定,ドンピシャだった。さすが俺……。)
そう。
事前申告をしてこない、”補習対象者の赤点はあとのお楽しみ”方式を取る数学教師の考えを読むのは容易ではなかったがーー…
なんとしてでも。
愛しの千羽と同じ空間で、同じ時間を共有するべく。
名取場は暴挙に出た。
学科の中でも一番得意といってもいい、数学の知識を活用し、脳みそをフル回転させて、その数値を叩き出す。
(……1学年生徒数1クラス30名×3 、90名のうち…前回の中間テストの数学平均点は75点ーーー…今回の小テストの問題数と…問題の難易度…そのうち全国模試における平均値からーー…統計学的に期待値のCの3乗かけることのーー…)
ただ単に補習対象になるためなら、白紙でテストを出してしまえば早い。もしくは全問、めちゃくちゃな解答を記入してしまっても…。
だがーー…この高校に入学して数ヶ月。
これまでの成績は、目立ちこそしないが優秀な順位で、なおかつ数学においてはトップに近い成績を残してきた名取場が、突然白紙でテストを提出なんてしたらどうなるか。
非行に走ってしまったのかと思い青ざめた担任が親に電話しかねない。
(ここは、やはり狙いを定めてーー…おそらく今回も間違いなく赤点を取ってくる千羽くんと同点付近を取りに行く。
大丈夫だ。俺ならできる。)
『名取場くん、珍しいですね?赤点補習なんて』
そう言ってクラス担任から手渡された、数学補習授業の日程と時間が書かれた用紙。
『……はい、ちょっと、今回は調子悪くて。
補習、頑張ります。』
(ぃよっしゃあああぁあぁーー!!!)
ーーー見事、大成功。
頭の中では祝福のファンファーレが鳴っていた。
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