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1-fool カッコ、怖い。
「ちょっと、ここ。座って？」
「う、うん…？」
ーーガタタッ
導かれるまま、千羽は名取場の座る机の前、椅子を引いて向かい合って着席する。
「えっとーー…あのさ。
千羽くん…一次関数、わかる？中学の時にやったと思うんだけど。
あの、一次方程式とか。」
「な、なんとなく……？きいたことは。」
「うん。
じゃあ、ーーこれ解ける？」
名取場はそう言うと、自分のノートを開くと空白の部分に
『2x-6 = -3x+9』
と、さらさら…と書き込み千羽の方へ向けた。
「…………？？？？」
その反応を見た名取場は、やっぱり…。と頭の中で呟く。
「基礎から、だね。
これはさ、両辺の式のxは同じ値になるから…それを求める式なんだ。
xを左辺に、数字を右辺に集めてーー…」
名取場は千羽にノートを向けたまま，反対側からサラサラ…と問題を解いてみせる。
ゆっくりと、解説付きで。
「あっ……！
なんか、思い出してきた……かも。」
「うん。これで、両辺を5で割って……
xはいくつになった？」
「えっと………えーーっと、x=3……？」
「正解。よくできました」
「ーーーーー！！」
千羽は顔を上げると、名取場の顔を見つめる。
それはとても嬉しそうに、キラキラと目を輝かせて。
「すごいっ！！すご……すごすぎ！！
すっごいわかりやすい！おれ、初めてこんなxやらyのなんたらかんたらがちゃんと理解して解けた気がする！
名取場っ！天才！？
ーーすごいよ！超わかりやすい！」
（ま、眩しい……っ！！）
三角のかわいらしい耳を立ててモフモフと、尻尾をブンブン振る千羽が見えてきて、名取場は思わず目を細める。
「可愛っ……んんっーーー…！げほ、ごふん。
ええっと、じゃあ、それを踏まえて…
こっちは解ける？
3(4x－5)＝4(x＋2)＋3(2x－1)……」
「ひえっ、カッコでてきた……こ、怖い。
え、えっと……」
「そ、そう。（）の中をまず、計算して…それからーーー…」
少しレベルアップした例題を目にして、一瞬で怯えた様子でシュンと耳を下ろす千羽に、名取場はもうキュンキュンが止まらない。
（千羽くん、可愛いすぎるよ…こんな近くで…こんな素敵な千羽くんの思い悩む姿が見られるなんて……。
もう、何もいらないです。
ーーー神様、ありがとう…）
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