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これだけやなこと尽くしだというのに、朝起きて顔洗って制服に着替えてどうにか脚動かして登校して、前をしっかり向いて授業を聞き流してるあたしをスタンディングオベーションしたい。ていうかしてくれ。だれかあたしを全力で褒めてくれ。徹底的にあますことなく、どこまでもどこまでも褒めて褒めて褒めまくってくれ。
むず痒い右のまぶたをこすると、茶色いアイシャドウが指先にべったりついた。たぶんこのままだと左右非対称だよな、と左のまぶたも同じ調子でこする。いまだに慣れない二枚重ねのつけ睫毛は、左右にぶるぶる揺れた。
つけ睫毛二枚重ねって、いくらあたしの自睫毛が貧弱だからってさすがにやばくない? あたしにメイクをする海晴にケチつけると、海晴は「ギャルっていったら平成ギャルが真骨頂だから。ハイビスカスつけなかっただけ譲歩してるから」と意味のわからない反論をした。
ツナくんが消えてから、海晴は毎朝あたしにメイクする。おまえが暗いと家のなかまで暗くなって迷惑なんだよ、というこれまた意味のわからない理由で。
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