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あたしはスマホからツナくんのアクキーを外して、ディスプレイケースに引っかけた。念のため、スマホのロック画面と待ち受け画面も、ツナくんからポメに変えた。
部屋をぐるりと見回す。扉をあけて真正面にあるポスターは、うっかり視界に入る可能性がある。あたしはポスターを外してクローゼットにしまった。
これで準備完了。
あたしはかろやかに階段を降りて、リビングの扉をあけた。集まる視線。それを蹴散らすように冷蔵庫をひらいてペットボトルを引っこ抜く。
真っ逆さまにしたジンジャーエールは滝行がごとくダダダダダッと落下して、みるみるあたしの全面塩コーティングされた咥内を一掃した。
パチパチパチパチ弾けているのは、炭酸かあたしの神経か、はたまた復讐という火花か。
炭酸と脂がごっちゃになった胃袋は、不機嫌にごぼりと音を立ててうねった。視界の端に、眉を八の字に下げた陸人が映る。
「ごめん。ぜんぶ飲んじゃった」
空のペットボトルを宙に放り、あたしはあいつに向き直った。
いつも見上げていた相手を、あたしはいま見下ろしている。変な気分だ。だけどそれ以上に愉快で爽快で、ますますあたしの奥底は蠢いた。
「これからよろしくお願いします、田中さん」
最高の笑顔で、あたしはたっぷりと微笑んだ。
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