赤い懸賞首

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赤い懸賞首

「隊長、俺は、もう耐えられません・・・」 長門はがっくりと膝をついた。 連日の任務に身も心も疲れ果てている。 「おい、泣き言いうな。俺達がやらなくて誰がやるんだ。」 「霧島隊長、俺達こんなことやるためにここに来たのですか?」 「つべこべ言うな。仕事だ、長門。俺だって、こんな・・・」 「すみません、隊長。」 「いいんだ。お前はよくやってる。ずっと見てるから、そんな事は俺が一番知っている。長門・・・辛いところに連れてきてすまん。」 霧島は長門の手を取った。 二人はしっかりと見つめ合い、また、立ち上がる。 「それにしても、捕まえたら即殺せって、異常ですよ。何考えてんだ、国は。」 「それだけ奴等は獰猛って事だ。五十だぞ、一体につき、五十。素人に取られてたまるかよ。いい稼ぎになるさ。」 「首、真っ赤でした。それに、強いですよ、あの体。とても、とても強い。まだ、あの抵抗が、残って、手ぇ、震えてるんです。」 長門の震える手を、霧島はしっかりと包み込む。 「俺に任せろ。」 「なっ!?霧島隊長、丸腰じゃないですか!?」 「ああ。俺は薬は使わないぜ、長門。一発で確実に仕留める。苦しめたらかわいそうだからな。」 「やっぱすげぇな。惚れ直しましたよ。さすがです霧島隊長。」 「まあな、しっかりそこで見てろよ、長門!」 「ハっ!ご武運を!」 長門は会社の外構の桜並木を、端から丹念に確認し、ターゲットを発見すると、素早く的確に処理していく。 「おーい!長門くーん!霧島くーん!もうそろそろお昼休みだからー!それー、午後、僕と主任でやるからー!もどっていーよー!」 遠くから課長の大きな声がした。 「ねえ霧島ぁ、終わりだって。」 「まじ?良かったぁ。俺これ怖いからもうやだぁ。」 「でも、一匹五十円って凄いね。それだけヤバいってことだよね。」 「まあな。かわいそうだけどな。」 「いやー、でも桜の木めっちゃ伐採されてるからさ、かなり深刻だよ・・・」 「確かに。」 クビアカツヤカミキリ 特定外来生物 生体を持ち帰ることや飼育することは法律で禁じられている。 見つけたら捕殺か所定の機関に即連絡する。 桜の保全のため、早期発見早期駆除が全国で推奨されている。 「ねえ、霧島隊長、今日家行って良い?」 「いいよ。お、長門ぉ、黒霧島、あるぜぇ。」 「やったぁ。クロキリぃ。だいすきぃ。」 「あとな、もう隊長、やだ。」 「えーつまんないなぁ。じゃあ次は、何がいい?先生とか、王子とか・・・」 「お、じゃあ、豚野郎で。」 「オッケー。こら、さっさとメシ行くぞ、この豚野郎!どう?おい豚野郎、今日のランチはお前だ!どう?」 「おおっ、いいねぇ。骨まで食べてくださぁい。」 「あ、赤い首輪、つける?ク・ビ・ア・カ〜」 「いやぁん、捕殺しないでぇー」 いぃーねぇー End
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