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「ただいま!」
玄関の方から響いた元気な声。聞いた瞬間、足がそちらへ向かっていた。
およそ五十年前に遠足に出かけた息子が、ようやく家に帰ってきた。
まったくもう。こんなに永いことどこに行っていたの。
どこに寄り道していたのか知らないけど、家に帰るまでが遠足でしょ。
…今、どんな姿をしているの? あの頃のまま? それとも…。
何でもいいわ。どんな姿でもあなたはお母さんの息子だもの。
万が一息子でなくても構わない。私はもうあの子を待ちくたびれた。だから、違う何かが息子に化けて私の前に現れ、私の命を奪うのだとしても構わないの。
今の私には、あの子が家に帰ってきた。それが総て。
「お帰りなさい!」
まだ玄関にはつかないけれど、私は、五十年ぶりに再会する『息子』にそう返事をした。
遠足…完
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