二人だけのお茶会

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二人だけのお茶会

どうしてこんなことになってしまったのでしょう……。 テーブルの上には紅茶と私が作ったキャロットケーキが置かれており、私の分まで追加されていた。 ニコラ様に休んで欲しくて持って来ただけなのに何故か私まで彼に気を使わせてしまった。 紅茶を飲みながら私はニコラ様をチラッと見る。 すると彼はキャロットケーキを一口食べて驚いた表情を浮かべた。 「美味しい……」 ボソッと言った彼の言葉を聞いた私は嬉しさを感じた。 「気に入って頂けて嬉しいです」 嬉しさのあまりについ顔が緩んでしまう。 彼の為に作ったお菓子を気に入って貰えて嬉しくないはずがない。 「調子に乗るな!誰も褒めてない。俺はもう少し甘めが好みだ」 「申し訳ございません。次からニコラ様の好みの味に近づけるよう精進します」 喜んでもらえたと思っていたら違っていたなんて。 勘違いして恥ずかしい…。 私はニコラ様に頭を下げた。 そんな私にニコラ様はチッと舌打ちをしたあと、私から視線を逸らして気恥しそうな表情で言った。 「顔を上げろ。……その、見た目は歪だったが、味は悪くなかった。また作ってくれ……」 彼は不器用にお礼を言った。 出会ったばかりの時は気づけなかったが、きっとこれは彼の不器用で素直になれない性格なだけかもしれない。 「はい。私で良ければ」 私はニコラ様に笑ってそう答えた。 「屋敷の者たちから聞いたが、家庭菜園の他に屋敷の中の掃除もしているそうだな。確かに俺はお前に贅沢は禁止だと言ったが、何も使用人のように仕事をして欲しいわけではない。どうしてそのようなことをするんだ?」 「やることが見つからないのです。もちろんニコラ様の妻としての役割は果たします。ですがそれ以外、やりたいことが見つからず手持ちぶたさになってしまい。つい……」 「お前の好きにしろとは言ったが、お前は放っておいたら休憩無しでやるそうじゃないか。侍女が驚いていたぞ」 「もしかして…。ニコラ様はお茶に誘ってくださったのは私を休憩させる為ですか?」 私の問い掛けにニコラ様は顔をぶわっと赤く染めてふいって顔を背けた。 「お前の為じゃない…。侍女に頼まれて仕方なくだ。それに話し相手も欲しかったからな」 ああ…。 やっぱりそうだ。 これは彼の嘘で不器用な優しさだ。 きっとニコラ様は使用人の皆から聞いて私を心配してくれたんだろう。 使用人の人達はニコラ様を大切に思っている。 彼らはニコラ様からたまにキツイ言葉を言われたりもするが、そこにはニコラ様なりの思いやりがこもっているのだと以前話していた。 人は何も思っていない人間に対して無関心、居ないものとして扱う。 私が実の父からそう受けたように。 だけど彼はこんな私にも気遣ってくれる。 ただの仮初の妻に対しても。 (…私を見てくれる人なんていないと思っていたのに) 私は顔を上げてニコラ様に小さく微笑んだ。 「では、お話しましょう。私の話を聞いて下さいますか?」
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