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贅沢は敵
翌朝。
ダイニングテーブルにはパン、スープ、サラダ、オムレツ、フルーツが並べられていた。
貴族の食事に比べたら少々見劣りする品の少なさの朝食。
だけど私は文句はなかった。
むしろ満足している。
パンはカチカチしておらず、ふわふわしてしていて、スープは暖かいし、オムレツだって感動する程の美味しさだ。
屋敷にいた頃に比べたら天と地の差。
契約結婚で衣食住を保証してもらえるのは正直有難い。
(食事ってこんなに幸せなことだったのね。知らなかったわ)
私が感動に浸っていると私の目の前に座るニコラ様は怪訝な視線を向けて来た。
「あの…?私に何か?」
「いや、お前食事に不満は無いのか?」
「はぁ?別にありませんけど」
私は彼の言っている意味が分からず、不思議そうな顔をする。
こんなに幸せな食事を堪能しているのに何処に不満なんてあるのだろうか。
「お前に一つだけ言っておく」
ニコラ様は真剣な表情をして私に言った。
「お前はこの屋敷では女主人だが、ここでは一切の贅沢を禁止する。ドレスや宝石はもちろんのこと、食事もだ。稀にある貴族の夜会の時だけは許可をする。それ以外は許さない」
「わかりました」
あっさりとした表情で私はニコラ様に答えた。
私はドレスも宝石も興味無い。
衣食住さえ保証してもらえれば問題はないのだ。
贅沢をするなと言われても平気だ。
なんてことはない。
「もし見つけた場合ただではおかないからな」
「ええ。必ずお約束しますわ」
鋭い目で威圧感を漂わせるニコラ様に私は怯みもせず静かに微笑んだ。
朝食を終えた私は部屋で本を読んでいたが
部屋に置いてある本は全て読み終えた為、特にすることがなく屋敷の中を散策していた。
「どうしてニコラ様は贅沢を嫌うのかしら?」
廊下を歩きながら私は思わずポツリと呟く。
貴族が贅沢をするのは不思議なことではない。
高貴な者が着飾るのは当然のことだ。
アルジャーノ家は侯爵家。
侯爵家なのに何故、贅沢を許さないのだろうか?
(私との契約には破格の契約資金を提示したのに……)
屋敷の中には目立った調度品はない。
だけど掃除は綺麗に行き届いていが使用人の数は少なかった。
でも屋敷内では好きに過ごして良いと言われているので贅沢をせずに自分の役割さえ果たせば良い。
あまり気にすることではないかもしれない。
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