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もう一度、君と
朝、一気に意識が戻されるような、突如鳴り出すスマホのアラームをすぐさま止めた。
横を見れば、妻はもうすでに起きてキッチンにいるようだ。
歯磨きを済ませ、リビングへと移動する。
妻の咲楽が忙しく朝食の支度をしていた。俺に気がついて、睨むような視線を投げかけ「おはよ」と短く言い放つ。
「…おはよ」
彼女をちらりと見て、俺はソファに座りテレビをつけた。いつものチャンネル、お馴染みのアナウンサー。
曜日ごとに内容が変わる、トレンドを紹介するコーナーが始まった。
いつも通りの朝……だけど、俺は気がついている。いや、俺が気がつくように彼女はそうしている。
さっきの声のトーン。明らかに不機嫌そうだ。普段よりテーブルに物を置く音が大きいのも、扱いが雑なのもわざとだろう。
――「私、怒ってますアピール」発動。
心の中で溜息をついた。
俺は目線をテレビに向けたまま、何も言わずにいる。
新婚当初は少しでも不穏になると、いちいちご機嫌取りをしていたが、それすらも妻は鬱陶しいらしい。何をしても逆効果なのだ。触らぬ神に祟りなし…。
原因は昨日、急に入った飲み会に参加した事だろう。
上司とその知り合いに捕まった。断れなかったんだ。
――夕飯いらないって連絡もしたじゃん。……すでに作ってあったみたいだけど。
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