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――親父、あの時はいい事しか言わなかったけど、もちろん親父のダメな所も俺は知っている。
反面教師にしてやろうと思っていたのに……どうも、俺はダメな所も親父に似てるらしいよ。母さんが懐かしそうにそう言うんだ。
「次会う時は、親父…おじいちゃんだからな」
実家の仏壇に手を合わせ、そう呟いた。
結婚式から一年半。来月、俺は父親になる。
親父の苦労がこれからまた、身に沁みて分かるのかな。
「そん時は、また話聞いてくれよな」
遺影の親父にニッと笑ってみせた。
「じゃ」と言って、胸元で片手をあげる。
線香の煙がふわっと舞った。
香りに包まれた俺は、なぜか頭を撫でられたような……そんな気がしたんだ――。
〜終わり〜
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