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気持ち早めに退勤し、コンビニで彼女が好きなシュークリームを買って帰った。
今朝のように怒りMAXだったらどうしようと警戒するも、妊活を蔑ろにしてきた事については、今日ひとまず謝ろう。
「ただいま」と声をかけたが、返事も妻の姿もない。
恐る恐るリビングへ入ると、電気は点いており、テーブルにはラップがかけられた今朝の残りが、新たに皿に盛られ、他のおかずも追加されていた。
……彼女は基本的には優しいし、俺への愛情も感じる。
俺はシュークリームを冷蔵庫に入れた後、寝室へと向かった。暗い部屋で彼女はベッドの中にいた。
「咲楽、ただいま。……寝てる?」
「……寝てる」
「起きてんじゃん」と軽く笑って、間接照明のスイッチを入れ、背中を向ける彼女の側に腰を下ろした。
「昨日は…てか、このところ、ごめん。その…妊活、咲楽頑張ってるのに…」
彼女はむくりと起きて、こちらを見た。泣き腫らしたような目をしているのが分かった。
「頑張るの、私だけじゃダメなんだよ。二人で頑張らないと…」
「うん、だよな。ごめん」
咲楽の目がまた潤み始めて、目からポロポロと涙が溢れた。
「私もこんな風にイライラしたくない。だけど、周りは皆当たり前に妊娠して、出産して…。焦りたくないのに焦っちゃうの! 病院行った方がいいのかなって思うけど、仕事忙しいまーくんの負担になるかもって悩むし…」
話せば話すほど、彼女の目から涙が溢れ出てくる。枕元のティッシュを数枚取って、涙を拭ってやった。しゃくりあげながら、尚も彼女は話しを続ける。
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