ネクタイで馬乗りな服装検査

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「舌ピはさすがにバレないっしょ」 「タカセン、黒染めのスプレー持ってたらしいよ」 「スカート切っちゃったんでむりでーす」 ありとあらゆる手を尽くして教師に反抗する生徒が続々と増える。 結局は教師に言われた通りにしなければならないのに、なぜか毎回反抗する生徒は絶えない。 そして、その最たるグループに属しているのが背の順で一番後ろの羊である。 全てがアウトの羊は、自分の順番がまだ来ないのを良いことに友だちと笑い合っている。 時間の無駄を食わされていることの怒りで、小夜が無意識に睨みつけていれば、羊がその視線に気がつき、体育座りで小さくまとまる小夜を見た。 目が合うと、にぱっと笑われた。 だから小夜は無視して目を逸らした。 「なあなあ小夜、そういえば昨日のスト6のCRカップ観た?」 安田の言葉に、小夜は途端に興奮した面持ちで「観た観た観たえぐかった決勝」と早口で喋り出す。 安田とは1年の頃から同じクラスで、お互いにチビでオタクという観点から自然と仲良くなった。 登下校は羊と一緒の小夜も、普段の移動教室や空き時間は安田と過ごすことの方が多い。 何よりも、ゲームやアニメ、漫画のことをより深く話し込める安田という存在は、小夜にとっては大きい。 「大将戦やばかったよな。俺いつもにゃめさん応援してるけど、思わずトカゲさんに気持ち入っちゃったもんな」 「俺今回ずっとトカゲさんの配信観てたんだよ。泣いたね、ラスト」 安田と先日のゲームの大会の話で盛り上がっていたせいで、目の前にそいつが現れるまで近づいていることも気が付かなかった。 「小ー夜っ」 にへら、と笑ったまま体育座りする小夜と安田の目線でしゃがみ込んできたのは、ゲームの話などちっともわからない幼馴染。 ビクッと肩を震わせて途端に気まずそうに口を閉じた安田に対して、小夜は「あんだよ」と損ねた機嫌を露わにしながら羊に言う。 安田とのゲームの時間を邪魔されたのが気に食わないのだ。
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