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今夜も両親は旅行で家を留守にしていた。
咲希は自室のベッドで眠っていたのだが、妙な声を聞いて夜中に目を覚ました。
「ぁ…………ぁ……」
隣のハルの部屋から聞こえてくる声だ。
これまでもハルは、両親が留守のときに、異性を部屋につれこんだことがあった。いつもであれば見て見ぬふりをしするのだが、今回はそうできなかった。声に聞き覚えがあったからだ。
この声……。
咲希は自分の部屋を出て、ハルの部屋の前に立った。真っ暗な廊下に淫らな声が漏れ出ている。
「あ……ハル君…………」
やっぱり、そうだ。この声は……。
心臓が大きく鼓動を打ちはじめた。
しかし、よく考えてみれば、あり得ないことだった。
ハルはこう言っていた。
わかったよ。もともと手をだすつもりなんてないけれど。
だから、これは夢なのだろう。
最近、何度か奇妙な夢を見たが、また奇妙な夢を見ているのだ。
この声がハルの部屋から聞こえるはずない。
そう確信すると心臓の鼓動が静かになっていった。咲希は冷静になって、ハルの部屋のドアを開けた。
すると、部屋の隅に据えてあるベッドの上に裸の由乃がいた。由乃の上には裸のハルが覆い被さっている。ふたりとも咲希に気づいたが、なにも言葉を発せずに、こちらをじっと見ていた。
夢であっても不快な光景だった。
咲希はベッドに近づいていき、ハルを力任せに突き飛ばした。小柄なハルはいとも簡単に壁際までふっ飛んだ。
「咲希、なにするの!」
大声をあげた由乃の上に馬乗りになって、華奢な首に手を伸ばした。首をぎりぎりと締めあげていくと、由乃は声にならない声を発した。
「がっ……」
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