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第3話
虹ヶ浜海水浴場で発生したレイプ殺人事件を境に、こうじは大きく壊れた。
こうじの両親は、ひさこが無気力になったのであきらめることを決めた。
こうじは引き続き高校へ行くように説得すると決めたが、激しい反発に遭ったのであきらめた。
こうじの両親は、ハローワークに職場実習の申し込みをした。
こうじは、8月5日より光市内にあるクリーニング工場に職場実習に行くことになった。
与えられたお仕事は、クリーニングに出された衣服のポケットの中に小物が残っていないかどうかを調べる簡単なお仕事であった。
朝8時半から夕方5時まで与えられたお仕事をする…
仕事が終わったあとは家にまっすぐに帰る…
家族みんなで晩ごはんを食べる…
家族4人が1台のテレビで父親が楽しみにしているテレビ番組を見る…
休日は、親の知人の家の結婚披露宴に出席する…
家族4人でふたりの門出をすなおに喜ぶこと…
これをジッセンすれば、壊れかけた家族のきずなをシュウフクできる…
……………
…と決意した。
しかし、その決意がわずか2日で揺らいだ。
その結果、再び家庭内で非常事態が発生した。
8月9日頃の午前11時50分頃だった。
うぐいす色のプッシュホンのベルがけたたましく鳴り響いた。
(ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!)
こうじの母は、受話器をあげたあと電話に出た。
「はい…ああ、クリーニング工場の工場長さんですね…息子はがんばって仕事をしていますか…もしもし…」
こうじの母が急に弱い声に変わった。
その後、おどろいた声で言うた。
「もしもし…現場責任者の男性がヤケド…ええ!!こうじが工場で暴れた!!…現場責任者の男性にアイロンで…もしもし…現場責任者の男性が心肺停止!!…もしもし!!もしもし!!」
こうじが現場責任者の男性に対して激しい暴力をふるった末に心肺停止の状態に追い詰めた…
もうだめ…
こうじの母は、その場に座り込んだあと激しく泣いた。
こうじが現場責任者の男性を殴るけるの暴行を加えた上に、アイロンを押し付けて大ケガを負わせた…
その末に、心肺停止の状態に追い詰めた…
その上に、こうじは止めに入った従業員さんたちを刃物で斬りつけた…
止めに入った従業員さんたちも大ケガを負った…
うち、3人が心肺停止になったあとに亡くなった…
どうしよう…
どうしよう…
こうじの母は、取り乱した表情で家から出た。
こうじは、傷害致死罪でケーサツに逮捕された。
この時もまた、こうじは意味不明の言葉を言うなど…より深刻な状態におちいった。
このため、ケーサツはまた簡易鑑定を実施した。
鑑定の結果、前回につづいて重度のシンシンソウシツで刑事責任能力がないと判断された。
こうじは、シャクホウされたあと迎えに来た母と一緒に帰宅した。
その頃であったが、心肺停止におちいった現場責任者の男性が死亡した。
こうじの母は家を守ることしか頭になかったので、被害を受けた人たちに対する損害賠償を後回しにした。
事件があった日、こうじはお仕事で大失敗をした。
こうじは、Yシャツのポケットの中に小物を残したままクリーニングに出した。
その後、持ち主の男性から『サイフの中身がずぶ濡れになった…クレジットカードなどの磁気カードが使えなくなった!!』と言うクレームがあった。
こうじはその前にも、ポケットの中に入っていた小物を台無しにしたなどのトラブルを起こした。
工場長さんがこうじに対して『こうじは役に立たない!!』ときつい言葉を言うた。
それが原因で、こうじはブチ切れた。
その末に、深刻な事件を起こした。
加害者のこうじは、簡易鑑定で刑事責任能力なしだから『ザマーミロ…』と言うた。
怒り心頭になったこうじの両親は、こうじから取り上げるものは全部取り上げた。
こうじの両親は『職場実習を経て採用されるまでは預かります!!』と言うたあとこうじをおさえつけた。
こうじの両親は、こうじが暴れない子にするためにぺちゃんこにつぶした…
それが原因で、こうじがまた暴力事件を起こしてケーサツに逮捕された。
また簡易鑑定で重度のシンシンソウシツで刑事責任能力なし〜シャクホウ…
そしてまた、両親がこうじをぺちゃんこにつぶす…
そしてまたこうじが暴力事件を起した〜ケーサツに逮捕〜簡易鑑定で刑事責任能力なし〜シャクホウ…
…と繰り返された。
こうじの両親が描いた家族主義は、これによりトンザした。
8月22日の夕方頃だった。
またところ変わって、島田川の河川敷の公園にて…
無気力におちいったこうじは、一人ぼっちでベンチに座っていた。
こうじは、遠くに見える橋の風景をながめていた。
遠くに見える橋の付近の空に渡り鳥たちが群れをなして飛んでいた。
こうじは、自分を置き去りにしたあと中国へ帰った実母に対するウラミを強めながらつぶやいた。
いらない…
温かい家庭なんかいらない…
家族なんかいらない…
ぼくは…
この世に生きる資格なんかないのだよ…
そんな時であった。
赤ちゃんを抱っこしているかよこがやって来た。
かよこは、バナナ色の長袖の上着にココア色のマタニティ服を着ていた。
かよこは、ベンチに座っているこうじに優しく声をかけた。
「こうじくん。」
「かよこさん…」
「ここにいたのね…」
「お散歩ですか…」
「そうよ…」
こうじは、かよこのふくよかな乳房に抱かれている赤ちゃんを見ながらつぶやいた。
いいな…
かよこさんのふくよかな乳房に抱かれている赤ちゃんはいいな…
赤ちゃんを抱っこしているかよこは、こうじの横に座った。
こうじは、かよこに対して今の気持ちを全部話した。
ガッコーに復学するメドが立たない…
職場実習がうまく行かない…
こうじの話を聞いたかよこは『そうねぇ…』と言うたあとやさしい声でこうじに言うた。
「そうねぇ…こうじくん…もう一度…高校に復学したらどうかな?」
「フクガクしろだと!!」
「せっかく入れた高校をやめるのはもったいないわよ〜」
「ふざけるなよ!!高校へ行かない子は犯罪者だと言いたいのかよ!?」
「そんなことはひとことも言うてないわよぉ…」
「それじゃあ、何のために高校へ行くのだよ!?」
「何のためって…人生で楽しい時間を過ごすために高校へ行くのよ…」
「楽しい時間って、なんだよ!?」
「例えば…夏休みとか冬休みとか…運動会…文化祭に修学旅行とか…あと…恋…」
「ふざけるな!!オレは…人生で楽しい時間なんか始めからなかったのだよ!!」
「こうじくん〜」
「オレはあんたがうざいんだよ!!」
「うざいって…」
「あんたはオレをグロウした…だから許さない!!ふざけるな!!」
こうじは、かよこに対して吐き捨てる言葉を言うたあと公園から走り去った。
赤ちゃんを抱っこしているかよこは、ボンヤリとした表情でこうじの背中を見つめた。
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