また隣で笑って

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 あれから十年経った。僕はもう社会人。今は毎日とはいかないけれど、町の図書館に通っている。あれから彼女には会っていなかった。  あの頃とは違う場所。でもあの頃に似たところで一人本を読む。そうしていたら、彼女が今にも声をかけてくれるんじゃないかって……。 「本が好きなの?」  その懐かしい台詞に、僕は思わず顔を上げる。見覚えのある、けれどだいぶ大人っぽくなったあの子の顔がすぐ横にあった。あの頃と変わらない優しい微笑みで。彼女の手には本が5冊抱えられている。シリーズものだ。  今度はちゃんと答えよう。 「うん、好きだよ」  だからまた、僕の隣で笑っていて。
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