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「あ…あの…。風雅君に…伝えたい事が。」
その瞬間喋れなくなってしまった。
風雅が沙羅を強く抱きしめていたのだから。
「良いよ。分かっているから大丈夫だよ。」
(…大丈夫じゃない。大丈夫じゃないよ…。)
もう別れるという状況に限界を感じたのか、少しずつ涙が溢れていた。
「聞いてくれ、沙羅。俺は君が好きだ。だから…。」と沙羅の耳の近くで呟いたがその瞬間、ガタイの強い風雅を思いっきり強く押し出した沙羅だった。
風雅は呆然としてしまった状況で、沙羅は涙を流しながらも…。
「ご…ごめんなさい…。私も…好き…。
でも…嘘をつくのは…もう限界…。
本当に…ごめんなさい。」
言い終えた直後、素早く逃げてしまった。
後ろを振り向かずに、ただただ逃げてしまった。
遠くから「沙羅!」と声が聞こえても走り続けた。
本当の事が言えなかった臆病者の初恋は終わってしまった。
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