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「本日はよろしくお願いします」
そう挨拶してきた引っ越し業者さんは、まだ何も始めてもいないのに息を切らした汗だくの五十歳くらいのオジサンと、二十歳そこそこの金髪の運転手の二人だった。
まぁ、単身パックだし…
大した荷物もないし…
仕事ぶりは見た目じゃないよね…
気づけば、先程までのしんみりした気持ちも何処へやら。
涙もすっかり引っ込んでしまっていた。
「よ、よろしくお願いします」
私は慌てて深々とお辞儀をした。
息子は地元に残る幼馴染に呼び出されて、家の前で立ち話をしている。
業者の二人は、決められた時間内で仕事を終わらせるために、淡々と「運び出すお荷物はどちらですか?」と作業を進めていく。
「これくらいの荷物なら、すぐだな…じゃあ、養生して段ボールから運んで」と、金髪くんがオジサンに指示を出す。
あぁ、そっちが上司なんだ…
オジサンはハンカチで額の汗を拭いてから「はいっ」と、いい返事をして慣れない手つきで部屋の養生を始めた。
「もっとガッチリ」「ちゃんと固定して」と、やることなすことオジサンは注意を受けていた。
チャラそうに見える金髪くんは、言葉はキツイものの作業は迅速丁寧で、今までかなりの数をこなしてきただろうことが窺い知れた。
それにしても、親子ほど年の離れた二人の関係が妙ちくりんで、作業している間も何だか目が離せなかった。
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