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困惑した空気が流れたのも束の間、一星が「それっ確認必要ないから!」と、慌てた様子で私たちの間に割って入ってきた。
物音を聞いて戻ってきていたらしい。
幼馴染の楓斗が私に向かって一星の背後で控えめに「ちわっす」と顔の高さに手をあげた。
私は「おう」と雑に返答をしつつ「…なんなの?」と、慌てた様子の一星を訝しく思って尋ねた。
「何でもない、大丈夫だから!」
一星は少々口調を荒げてそう言うと、続けて「そのまま運んで下さい」と金髪くんに言った。
「なぁに~?そんなにムキになって…」
「……」
一星は、私の問いかけに無視を決め込む。
金髪くんは笑いを堪えたような、複雑な表情をしていた。そしてオジサンもまた、含み笑いを浮かべていた。
「ミサトさん、人は誰しも他人には見られたくないモノってあると思うんだ…」
楓斗が深刻そうな顔でそう言った後、急に表情を変えて「なぁ?」と、ニヤニヤしながら一星の肩に手を置いて、俯き顔を覗き込んだ。
「うるせーよ」
一星はバツの悪そうな顔で、楓斗の首に腕を回し、ヘッドロックを決めた。
「わ、わるかったよ…ギブギブ…」と、楓斗が一星の腕を叩く。
そんな二人のじゃれ合う姿を見て、その場に笑いが起こった。
楽しげにじゃれ合う二人の姿をしっかり眺めていたいのに、心なしか楓斗の目が潤んでいることに気づいてしまい、私の視界も滲む。
「うわー…もう、泣くなってぇ…って、え?楓斗、お前まで!?」
「うるせぇ、泣いてねーよ」
楓斗はズズズと鼻をすすって、一星の肩を軽くグーパンチした。
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