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二時間、車で引っ越し業者の後を追い、新天地での荷物の搬入に立ち会う。荷解きは自分でするというので、生活必需品を買うために百均やホームセンターを巡った。
田舎と違い、少し歩けばスーパーもコンビニもあって、便利な立地だ。だが、周りは高層な建物ばかりで、人も多く、ガラリと変わる環境にちゃんと馴染めるのかな?と少し心配になる。
「もう大丈夫だから、帰れよ」
一星は、壁時計を取り付けながらそう言った。
親の心子知らず…か。
一星の気持ちはもう新生活に向いているのだ。 思い返してみたら、自分の時もそうだったもんな…と、今更ながら当時の両親に対し、申し訳ない気持ちになった。
そっか、母が待っているな…
私は後ろ髪引かれながらも、また二時間かけて自宅へ戻った。家に着いたのは、二十二時を過ぎた頃で、その日はクタクタで泥のように眠った。
それから一ヶ月。
ゴールデンウィークを目前に、一星の住む隣町の学会に参加する機会ができた。
それを口実に一星の所に寄ろうと、私は今、作り置きおかずを携えてアパートの階段をのぼっている。
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