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雨の日、憧れの人と再会した。
その日の夕刻、電車の窓をバチバチと雨がたたき始めた。
よりにもよって降りる頃に。改札を抜けて駅を出ると雨足が強くなり大雨になっていた。傘をさして歩き出す人もいれば、外を眺めている人もいる。迎えの自家用車が道路脇に列をなしている。僕はスマホを取り出し、妻にメッセージを送る。
『雨が降ってる。車で迎えにきてくれない?』
ピロン
すぐに返事があった。
『無理』
駅構内のコンビニから、透明のビニール傘を買い外に向かう人がいた。
僕は小走りでコンビニに向かった。店内で傘を探していると、レジで店員が、中年男性に話しかけていた。
「すみません。傘は先ほど売り切れました」
男性はチッと舌打ちをして店を出て行った。僕はその後を重い足取りで続いた。
バス停のベンチに座り、ぼうっと外を眺めていた。お迎えの車はだんだん少なくなり、タクシー乗り場に並んでいた人の列も短くなっていった。
タクシー乗り場の列が消えた時、一台のタクシーが滑り込んできた。
僕は、駆け寄り、吸い込まれるようにそのタクシーに乗った。
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