2. 仮面の貴公子の正体

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「アンゼリカ……やっと見つけた」 そう言うと、男性は左手で黒の仮面を取り去る。 そしてもう無用なものだというかのように、馬車の窓から外へ投げ捨ててしまった。 まっすぐに見つめられるその目に、私は体が固まる。 (なんて、綺麗な人…) 驚くほど整った美貌と、艶やかな金髪。 そして切れ長のはちみつ色の瞳が私を捉えると、その手が私の頰を優しく撫でる。 「やっと会えた、アンゼリカ…」 彼から紡がれる言葉と響きに、頭が思考停止しそうになる。 「あ…貴方は、私を知っているんですか?」 私の問いかけに彼は少し目を見開くと、頰を撫でる手が止まる。 私は何か気に触ることを言ってしまったのだろうかと、無意識のうちに息を詰めてしまう。すると彼は安心させるように再び頬を一撫でした。 「僕はテオドール。テオドール・ルブランシュだ」 「テオドール様」 どこかで聞いた名前のような気がするけれど、思い出せない。 「様はいらない、テオドールでいいよ」 「でも…」 そのとき馬車が止まり、コンコンと御者がノックする音がする。目的地に着いた合図だ。 「詳しい話は屋敷の中でするとしようか」 そしてテオドールさんはお屋敷の玄関の前に停まった馬車から先に降り立つと、私に手を差し伸べてくれる。 こんなふうにレディーとして扱われるのは家が没落してから無かったことで、私はその手を前に一瞬驚きで固まってしまう。 私は昔教えられた作法を思い出して手を添えるとテオドールさんが微笑んでくれる。 私はその笑顔に少しほっとして慎重に馬車から降りた直後、またふわりと抱き上げられてしまった。
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