1. 最低で最良の日

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「おやおや、その大事な商品に傷をつけようとしている不届き者は、どこのどいつなのかな?」 「!?し、支配人…!」 おそるおそる目を開けると、私と大男な間に細身で長身の男性が立ちはだかっていた。 私に振り下ろされるはずだった手はその男性に捻りあげられて、あの大男が嘘みたいに震えあがっている。 (支配人っていうことは、この人がこの闇オークションを取り仕切っている人…?) 「彼女は俺が引き取るからお前はもう戻っていい」 「し、しかし」 「聞こえなかった?下がれと言ったんだよ」 剃刀のような視線と冷淡な声をもって一睨みすると、大男は脱兎のごとく走り去っていった。 「大丈夫かい?ケガはなかった?」 右目にモノクルをかけた『支配人』と呼ばれた男性が、一転して柔和な笑顔を向ける。 すらりとした長身に、全身黒のスーツを身にまとっている。 一見シンプルな印象だけれど、スーツ下のウエストコートには、金糸や銀糸で華やかな織り柄模様が施されていて、それだけでも彼自身もまた身分のある人なのではないかと思った。 「助けていただいて、ありがとうございます」 「いいや、お礼を言うのはこちらのほうだよ」 「え?」 男性は私の顎に手をかけると、有無を言わせぬ力で顔を上を向かせる。 私は突然のことに驚いて固まってしまった。
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