4. 貴公子の独白〜テオドールSide

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そうして、夏の休暇はあっという間に過ぎた。 楽し過ぎて新学期が始まって会えなくなるのが、とにかく寂しかったことを覚えている。 そして新学期が始まって程なくした頃。 ヴラディカ男爵家が取り潰しになったと耳にした。 けれどそれは寄宿舎内の噂話にしかすぎず、僕には確かめるすべがなかった。 僕は父に手紙を書きそれとなく探りを入れると、噂話が本当だと知った。 けれどそれ以上どうすることもできず、ただ次の冬の長期休暇を指折り数えるしかなかった。 そして訪れた次の長期休暇のときにアスバルへ行くと、ヴラディカ家の屋敷は別の領主のものとなって、アンゼリカたちの行方はまったく分からなくなってしまっていた。 自分なりに探したけれど、子どもである僕にできることは限られた。 父も祖父も田舎の領主のことには興味もないのか取り合ってくれない。アンゼリカの行方も一向に知れない。 けれど、だいぶ時間が経った後にその理由が分かった。 ヴラディカ家が取り潰しになったことは、とある公爵家が絡んでいた。 その公爵家の事業失敗の尻ぬぐいをさせられるかたちで、ヴラディカ家の当主は騙されて家を潰された。 だから王都では、ヴラディカ家の話題はすっかりタブーとされていたのだ。 ―――このままではだめだ。もっと『力』を持たないと。 もっと僕に地位と権力があれば、すぐにでもアンゼリカを探しに行けるのに。
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