5. 溺愛と嫉妬と

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その次の瞬間、カーリーとケイトは悲鳴を上げた。 なんてことのない、不注意での切り傷。 血もすぐ止まったのに悲鳴を聞きつけたセトさんまで台所に飛んできて、それからはもう、屋敷の中はひっくり返したような大騒ぎとなってしまった。 「アンゼリカ!ケガをしたって本当かい…!?」 仕事から帰ってきたテオドールさんは、セトさんから話を聞いたのか私が休んでいた部屋に飛び込んできた。 「あの、そんな大したケガではないんです。私がついうっかりして軽く指を切ってしまって」 それなのに公爵家の主治医まで呼んで消毒と手当までしてもらうことになってしまい、私は恥ずかしいやら申し訳ないやらで居た堪れなくなってしまう。 テオドールさんは私の様子を見て安堵の息をつくと、人差し指の先に巻かれた包帯を壊れ物に触れるようにそっと撫でた。 「メイド長から聞いたよ。僕に内緒で台所仕事を手伝っているって」 私はテオドールさんの少し低くなった声にドキリとして、肩を竦める。 「ごめんなさい…でも、どうしてもお屋敷の皆さんの役に立つことがしたくて」 ふう、とテオドールさんは息を吐き出す。 「まったく…君はそんなことしなくていいんだよ。これからは台所に入ることもナイフを持つことも禁止、いいね?」 テオドールさんは包帯の上から小さくキスを落とす。 「はい…」と頷くと、テオドールさんは優しく微笑む。 私は少しテオドールさんの雰囲気が柔らかくなったことを感じ取って、今日一日気になっていたことを尋ねてみることにした。
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