5. 溺愛と嫉妬と

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◇◇◇◇ それから、私はお屋敷のお手伝いを一切させてもらえなくなった。 カーリーもケイトも、メイド長もセトさんも。 私が何かできることはないかと声をかけようとするたびに『お部屋で休んでいてください』と遠ざけられてしまう。 (ここにいてくれるだけでいいと言うけれど…) 私はもっと役に立ちたいのに。 広大なお屋敷、豪奢なお部屋、綺麗なドレスを与えられて。 ただ何もせずにいるだけなんて。 これじゃまるで、人形みたい――― 頭に浮かんだ言葉に、私は振り払うように首はぶんぶんと振る。 違う、人形なんかじゃない。 テオドールさんは、記憶が戻らない私でもこんなに優しくしてくれる。 お屋敷の皆さんもただ心配してくれているだけ。 それでもモヤモヤとした気持ちを打ち消すことはできなくて、私は気分転換にお庭に出るくらいなら許されるだろうとこっそり部屋を出た。
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