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6. 慈しむように
「…アンゼリカ!気がついたの?」
目が覚めると、心配そうにのぞき込むテオドールさんの姿があった。
(そうだ、私倒れたんだった…)
「テオドールさん、私」
「無理をしちゃダメだ」
少し頭がふらつきながらも体を起こそうとする私に、テオドールさんは背中を支えてくれる。
それから公爵家の主治医の先生が呼ばれて私を診察してくれた。
今のところ問題はなさそうだけれど、念のために数日間は安静にするようにとの指示だった。
先生が去って、再び私とテオドールさんの二人きりになる。
「どうして部屋から出たの?」
「それは、」
テオドールさんが発した一言で、一気に周りの空気が冷えたような気がした。
確かに私は「部屋から出ないように」というテオドールさんとの約束を破ったのだから、怒りはもっともだ。
「セトたちにも君を部屋に留め置くように頼んでいたはずだったんだけれど」
咎めるような声音と注がれる視線。
「…ここでの暮らしが嫌になった?」
私は顔を上げて違いますと否定するけれど、テオドールさんは寂しげな表情を湛えたままだった。
自分の行動でこんな顔をさせているのかと思うと、彼の方こそ私のことが嫌になってしまったのではないかと思ってしまう。
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