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「この前君がケガをしたときはメイド長が、今日はセトが帰ってくるなり僕のところへ飛んできた。
平身低頭して、処罰なら何でも受けると。どうしてだと思う?」
指を切って、痛っと思わず声を上げたとき。
呼吸が苦しくなって倒れたとき。
お屋敷の人は大慌てで、私が「大丈夫です」とどれだけ伝えても、まるで重大な事件が起きたかのように皆狼狽していた。
「アンゼリカは僕の大切な人だから。
君はもう僕の婚約者なんだから、丁重に扱うのは当然のことだ。
そういう立場の人が使用人と同じことをする必要もないんだよ」
静寂に包まれた部屋にテオドールさんの声だけが響く。
「君はときどきそのことを忘れて、『自分に価値などない』と思ってしまうようだけれど」
私の心の中を言い当てられて、私は俯くしかない。
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