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「たぶん、自信がないから…だと思います」
「それは僕に愛されていないと感じている、ということ?」
「いえ、そうじゃないです。だけど、」
「記憶が戻らないから?」
私は力無く、こくんと頷く。
テオドールさんが私に伝えてくれた思いが嘘だとは思わない。
もし嘘なのだとしたら8年も私を探したりしないし、あんな大金を使うはずもない。
けれどその根拠となる記憶が、共有されるはずの思い出がすっぽり抜け落ちていることが、私を心許なくさせる。
そんな気持ちを抱えたまま、
自分の存在も置かれた立場も分からないまま、
ただ与えられるだけを待つのは、まるで籠の鳥のようで。
「……籠の鳥か。本当に閉じ込めることができたら、どんなにいいだろうね」
テオドールさんは頼りなげな声で呟く。
私は何と返したらいいのか分からなくて、ただ握り締めた手だけを見つめていた。
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