8. エリート貴公子の甘い執着愛

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8. エリート貴公子の甘い執着愛

◇◇◇◇ 「テオドール様、こちらが本日届いた分です」 「…はぁ、相変わらず多いな」 僕はセトがデスクに置いたトレー上の手紙の束にうんざりする。 「仕方がありません、突然の発表でしたから」 アンゼリカと思いが通じ合ってから2ヶ月。 正式にアンゼリカとの婚約を発表してからというもの、各方面から日々ひっきりなしに手紙や贈り物と称した袖の下が送られてくる現状に、予想していたとはいえ少々辟易していた。 特に鬱陶しいのが、ヴラディカ家取り潰しの主たる原因なった公爵家だ。 三大公爵家であるバロンフォード公爵家には逆らえず、むしろ過去を蒸し返されないよう随分と媚を売るようなあからさまなコンタクトが増えてきている。 「おや、読まれないんですか?」 「どうせいつものやつだ。ギリギリまで引き延ばして気を揉めばいいさ」 「お人が悪いですね」 僕は差出人だけを見て、封は開けずにデスクの上に次々と投げていく。 そのとき、一つの封書が目に止まった。 裏返して差出人を確認して――僕はペーパーナイフで封を切る。 中には便箋4枚の手紙。 それに素早く目を走らせて4枚目まで読み終えると――その手紙を半分に破り捨てた。 「今の手紙は?」 セトが声をかける。 僕は封筒の裏面を見せると、セトは片眉を上げて「…なるほど」と呟いた。 手紙は、アンゼリカの父からだった。 内容は酷く陳腐なものだ。 婚約の報を聞いて驚いた。 元気そうで何よりだ。自分も母さんも元気にしている。 一度会ってゆっくり話したい。 できれば、結婚するまでの間もう一度一緒に暮らさないか――というものだった。 (…まったく馬鹿馬鹿しい)
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