1. 最低で最良の日

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「ご覧ください、何と言ってもこの深く青い目!当オークションでも滅多に出ない大変希少価値の高い掘り出し物でございます!」 波のようなざわめきが起こって、私は煌々としたスポットライトの下で衆人の目にさらされる。 『確かにあれは珍しい』とか『1,500いや2,000までなら出せるな』などといった下卑た呟きや笑い声があちらこちらから聞こえる。 彼らはみな身分を隠して参加しているため、全員仮面舞踏会で使うような仮面を付けている。 それがますますこの場の異様さを際立たせていた。 (これが…最良の日だっていうの?) あのモノクルの男性も、所詮はこのオークションの支配人だ。 きっとちょっと珍しい商品をからかって遊んだだけに過ぎないんだ。 ――それを真に受けて、馬鹿みたい。 「また元令嬢の出のため礼儀や作法が見についており、主人に忠実なしもべとなりましょう。それでは初めは300、300万からのスタートとなります」 そして、350、400などと会場から手が上がり、あちらこちらから声が飛び交うのを他人事のように眺めていると―――会場の一番後ろにいる一人の男性が立ち上がるのが見えた。 「―――2億」 響き渡った声に、会場は水を打ったように静かになった。
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