2. 仮面の貴公子の正体

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2. 仮面の貴公子の正体

それから私は、外で待つ馬車の中へと運ばれ座らされた。 外はすでに夜の帳が降りていて、この辺りは街灯もなく漆黒の闇に包まれている。 黒い仮面の男性は「少し手続きがあるから」と言って、従者らしき人を残して地下へと戻っていった。 私の服は相変わらずみすぼらしい麻布のワンピース1枚で、その上から彼が着させてくれた上質なコートに包まれている。私は彼の後姿が見えなくなると途端に心細くなって、あの人が掛けてくれたコートを前でぎゅっと合わせた。 しばらくして、馬車のドアが軽くノックされて男性が戻ってきた。 馬車に乗り込み私の隣りに座ると御者に指示を出す。 「待たせてしまったね。いろいろと手間取ってしまった」 「いいえっ、大丈夫です…」 戻ってきてくれた。 その安堵感で私の胸はいっぱいになる。 馬車はゆっくりと走り始め次第に加速していった。 「やっぱり、かなり揺れるね。ああいった場には身分を隠して赴かないといけないから、こういった質素な馬車を使うんだ」 「いえ、そんな十分すぎます…」 私は馬車の背もたれに少し体を委ねてから、ぐるりと馬車の中を見る。 暗くて内装はよく分からなかったけれど、何気なく手で触れた座面は手触りの良いベルベットで、座り心地もとても良い。 (これで質素だなんて…普段はどんな馬車に乗っているんだろう) 「そうだ、忘れないうちに返しておくよ」 そう言って袋を渡される。 中を見ると取り上げられていた私の所持品だった。 「あ、あの、良いんですか?」 「良いもなにも、元は君のだろう?屋敷に着いたら服もちゃんとした物を用意するから少しの間我慢してほしい」 あまりにも、初めに想定していた展開と違いすぎて困惑してしまう。
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