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セーラー服に包まれた、由依の華奢な肩が震えている。乱れた髪が帳のように横顔を隠す。けれど艶やかな黒髪から垣間見える顔の輪郭の丸さに、壱成は胸を衝かれた。
大団円を無邪気に信じられるその素朴さを、憐れとも愛おしいとも思う。
依頼人と相対して、こんなに心が揺さぶられるのは初めてだった。
近くの机にボトルを置き、壱成は懸命に言葉を探す。
『自分を責めるな。結果として離婚ということになっても、それを選んだのは君の両親だ。君のせいじゃない』
『私のせいなの。私がよく考えなかったから……っ。全部黙っておけばよかったのに、余計なことを言ったの』
湿った声色で自分を責める由依を、壱成は『違う』と遮った。
『君は絶対に悪くない。いいか? 君の抱いた最初の願いは間違いじゃない』
由依の肩を掴み、なんとか顔を上げさせる。彼女の小さな顔の中で、涙に濡れた瞳がとろりとした光を含んで輝いていた。一つ瞬けば、目尻に雫が珠となって、すうっと頬を滑り落ちていく。
『間違いじゃ、ない?』
色を失った唇がわななく。壱成は力強く頷いた。とっさに口をついた自分の言葉に、背を押される思いだった。
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