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「転校生を紹介します」
会うのは難しいと思っていた運命の相手と、まさかの形で再会とすることになった。これは、二次元でよくある典型的な再会ともいえる。実は私は、二次元に生きていたのではないかと疑ってしまった。
朝のHRで突然、担任が転校生を紹介した。GW明けのこんな時期に転校生とは珍しい。とはいえ、私にとってはそいつがメガネをかけているか、否か。それが興味の対象になる。
「目黒藍(めぐろあい)です。よろしくお願いします」
「仁美、あんたが好きそうな男子が……。いや、あんたわかりやすすぎ」
前の席に座るみさとが後ろを振り返ってきた。そして、私の表情を見て苦笑している。私の顔はきっと真っ赤に染まっているに違いない。慌てて顔を伏せたが、親友にはばれてしまった。
「じ、実はね……。今紹介されている転校生を私……」
「うわ、それはすごいね」
私は正直にみさとに転校生と電車で会ったことを話すことにした。
もし、事前に電車で会った運命の相手が私のクラスに転校生としてやってくるのを知っていたら、もう少し表情をコントロールできたはずだ。顔を真っ赤にすることなく、スマートに転校生の紹介を聞いていられた。不意打ちだったので対処できなかっただけだとわかってもらいたい。
だって、あれは反則だ。あのメガネ姿に惚れない方がおかしい。電車で出会った時も思ったが、シャープな顔立ちにスクエア型の黒縁メガネ。王道のザ・メガネスタイル。もっと細かく言うと、吊り上がった一重の瞳に銀縁メガネが良く似合っていた。とはいえ、メガネを外したら、三白眼の吊り上がった瞳で目つきが悪く見えてしまうだろう。メガネをかけることで、目つきの悪さが中和されている。
「羽田、まだ朝のHRは終わっていないぞ。前を向け。それで、目黒の席だが……」
担任が教室全体に視線を向けた。私もつられて辺りを見回すが、現状、このクラスで空いている席は一つしかなかった。どうして朝、教室に入ってすぐに気づかなかったのか。私の隣の席に見知らぬ机といすがあったことに。
「席はそうだな、日好の席の隣がちょうど空いていたな。そこに座ってもらおうか」
「なななななっ!」
担任の言葉に私の心は大荒れだ。つい、心の荒れ具合が言葉に出てしまった。確かに空いている場所は私の隣しかない。
「わかりました」
転校生の目黒君は軽く頷いて返事をする。そして、私の元に(性格には私の隣の席)に向かって歩いてきた。
「よろしくね」
「よ、よよよよ、ろしく、お、おお願い、します」
席に着く前に、目黒君は私に挨拶してくれたのだが、どうにも平静を保っていられない。せっかく挨拶してくれたのに、ずいぶんと間抜けな返事となってしまった。
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