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7メガネ屋さん
放課後、私たち二人はみさとが中学のころに買っていたというメガネ屋に来ていた。高校の最寄り駅から一駅の場所にショッピングモールがあり、その中に入っている店だ。みさとはそこでメガネを買っているそうだ。
「私も、そろそろ新しいメガネが欲しかったところなんだよね。ほら、いくらコンタクトが快適って言っても、目の調子によっては入れられない時ってあるでしょ。そういう場合に、一つは私に似合うメガネを用意しておきたいの」
コンタクトとは便利な反面、面倒なことも多いようだ。私だったら、目の中にあんな薄いレンズを入れられそうにない。怖くて買うのもためらってしまう。目に異物を入れるのだから、トラブルがあって当然だ。目に異物を入れなくて済むような視力を維持できている自分の遺伝子は優秀でありがたい。
ショッピングモール内の店ということで、店内は平日の夕方だが賑わいを見せていた。私たちのような学生が二組、大人の女性が一人、ご老人夫婦の一組がメガネが並ぶショーケースを見ていた。
「いらっしゃいませ。今日はどのようなメガネをお探しですか?」
私たちが店内に入ると、店員が私たちに気付いて声をかけてきた。
店員の女性はオシャレなメガネをかけていた。私が今まで見たことのないフレームのメガネだ。丸いレンズなのだが、フレーム部分が丸ではなく多角形のような角がついていた。茶色と黄色の島縞模様の色合いで、小顔で目がぱっちりとした店員に良く似合っていた。
「ええと、私の友達がオシャレ用にかけるメガネを探していて」
「メガネ女子になりたいんです!」
みさとが店員に私を指で示して説明するが、それよりも自分で伝えたほうがよい。私は店内だということを忘れて、大声で宣言した。
「そ、そうなりますと、イメージチェンジということですね。こちらに並ぶショーケースの、メガネは試着も可能ですので、自分に似合うお好きなものをお選びください」
店員は私の宣言に一瞬、戸惑いを見せたが、すぐに営業用のにっこりしたスマイルを私たちに向けて、そのまま私たちから離れて、他の客の対応を始めた。怪しまれたのかもしれない。
「仁美、店内で大声出さないでよ。そんなに空気読めない人だった?」
「いや、つい目黒君のことになると、心の声が口から勝手に出てしまって……。ごめんね」
反省して小声で話し出した美里に合わせて、私も小声で返事する。私たちはショーケースにあるメガネをかけることにした。
「メガネ屋さんって、初めて入ったけど、いろいろ種類があるんだね」
家族全員視力がよくて、メガネ屋さんに縁がなかったので、初めてこんなにたくさんのメガネが並ぶショーケースを目にした。この中から、メガネを必要とする人は自分に似合うメガネのフレームを選ぶのだ。
「まあ、種類はたくさんあるけど、自分に似合うのってなかなかないんだよねえ」
試しにかけてみようとは思ったが、どれから手を付けていいのかわからない。隣で一緒にショーケースを眺める親友は、慣れているのかすぐにメガネをショーケースからとって鏡の前に移動してかけている。
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