1メガネフェチ

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「仁美だって、同じことが言えるよ。あんた、そんな見た目なのに、まじめで成績優秀とか、初対面の人間から見たら、結構驚くと思う」  私の顔を指さす失礼な親友だが、言っていることは間違ってはいない。なにせ、私の容姿は、世間的には彼女の言葉とは正反対の不真面目、ヤンキーの部類に属されている。 「メガネ関係ないね」 「人は見た目に左右されるということ。とはいえ、メガネをかけているからまじめで優秀、とかいう幻想はない」  ちらりと私の顔を見たみさとは、視線を自分のお弁当箱に戻して食事を再開した。お弁当は彼女の母親の手作り弁当で毎日かなり気合が入っている。なんでも、母親が毎日SNSに投稿しているらしく、彩豊かで可愛らしい。ご飯は海苔で可愛らしく犬が描かれているし、おかずは卵焼きがハートに置かれ、肉巻きに野菜の和え物、リンゴがウサギ型に皮が切られている。  私のお弁当はおかずこそ母親が作ってくれるが、お弁当箱に詰めるのは私で、一般的なものだ。卵焼きに冷凍食品の唐揚げにコロッケ、ミニトマト。 「仁美ってさ、メガネフェチだと思うけど、メガネをかけていない人には魅力を感じないの?」  みさとの質問は誰もが一度はメガネフェチに向ける疑問だろう。そんな質問、簡単に答えられるに決まっている。そうでなくてはメガネフェチなどやっていられない。私は胸を張って自信たっぷりに親友に伝える。 「メガネは神が与えしもの。当たり前だけど、いくらイケメンと呼ばれる人間でも、メガネをかけていない人には、私は一ミリも萌えないから。逆に不細工と世間で呼ばれる人間でもメガネを与えさえすれば、あっという間に私の中のメガネフェチの血が騒ぐというわけ」 「はあ」 「そもそも、イケメンという概念すら私にはない。メガネをかけていない人は、人間等しく一般人」 「わけわからんわ。その理屈で言うと、私はどうなの?中学校時代にメガネをかけていて、今はコンタクトの私は?」 「親友に萌えるなんてことはないよ。だから、メガネをかけていてもいなくても関係ない。普通だね」 「普通って……。いつも言っているけど、メガネなんてかけない方が、生活は絶対楽。そうそう、コンタクトって可能性の宝庫だよね。黒目が大きくできるし、目の色も変えられる。見た目を自由に変えられるってこと。私もちょっと高いけど、カラコン入れてみたんだ。どうかな?」  人に質問しておいて自分勝手な親友である。顔を近づけてきた親友の目を仕方なく覗いてみると、確かに普段のみさとの三白眼の目つきの悪さが軽減しているように見える。そして、瞳の色もいつもより茶色がかった色をしているような気がする。全体的に可愛らしい雰囲気に仕上がっている。 「目つきの悪さが減った感じかな」 「正直な感想ありがとう」  そんな会話をしているうちに、昼休みが終わりの時間となった。私たちは食べ終えたお弁当箱を片付け、それぞれの席に戻った。
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