いたずらと我慢比べ

1/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

いたずらと我慢比べ

──僕の初恋は通っていた高校の幽霊だった。 霊視とか霊感と呼ばれるものを僕、三木雄介は幼い頃から持っていた。もちろん一般的には、見えないものを見るというのは、統合失調症などの精神疾患やLSDなどの幻覚剤の作用なんかが疑われると思う。 しかし、生まれつき見える僕には説明がつかない。周りには、単に空想癖の強い子供として処理されたと思う。 ──現に高校生になった僕自身も、段々と自分の見ているものが空想なんじゃないかと思い始めていた。 いつも通り、下校しようと昇降口の下駄箱で靴を替えようとした時、教室に今日の課題に使う資料集を忘れたことに気づいた。 「はあー」 僕は自分のど忘れに嫌気が差してため息をつく。忘れ物を取りに戻るというのは頻繁にあるんだけど、毎回面倒くさい。 僕は引き返して階段を上がり、二階の教室が並ぶ廊下を歩く、外では野球部がグランドで練習している。カキンっとヒットした音、向かいの校舎では吹奏楽の演奏の音がする。 夕陽が廊下をオレンジ色に染める。僕はこのいかにも放課後という感じが好きでもあり、少し不安な気持ちにもなる。 自分のクラスの教室に着くと、はっきりしない不安みたいなのは大体ろくなものじゃないことを実感する。 教室で空中浮遊する女子高生、うちの高校の制服を着ている、髪は腰にギリギリかからないくらいには長い黒髪。目も中々大きく、珍しいけど、その控えめな雰囲気は恐ろしいどころか僕のタイプ、いやあれは間違いなく幽霊だ。関わらないほうがいいだろう。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!