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僕はなにも見なかったふりをして教室に入る。すると幽霊が僕に近づいてきて、いたずら顔で頬を人差し指でツンツンしてくる。
──なにもいない、なにも見えてないんだ。反応するな。
幽霊はいたずらの引き出しを開ける、手のひらに隠し持ったチョークを僕の横顔に投げたり、さらに黒板消し、筆箱と手品みたいに手のひらから出して投げてくる。
もちろん実体はないので、普通は見えないし感じないんだけど、僕は見えるし感じる。
幽霊は最初、投げつけるのが面白いのか、クスクス笑っていたけど、僕の練りあがったやせ我慢による真顔を見てつまんなそうな感じで、元の浮いていた場所に帰ろうとする。
──いたずら好きの幽霊なんて腐るほど会ってきた、百戦錬磨のスルースキルを舐めるなよ
謎の勝利感を胸に僕は机のなかの資料集を手に取り、教室を出ようとした時だった。
幽霊はなにか思いついたらしく、僕に近づいて脇をこちょこちょしてきた。
──ありがちないたずら、さっきの手品より質が悪い。
しかし、なんだろう、どうもこの幽霊は他の幽霊と比べて実感がある。
「や、待って、やめて」
駄目だ、幽霊からの感覚は普通の人間のものより薄いはずなんだけど、この幽霊リアルすぎる。
そして、僕はリアルのこちょこちょにめちゃくちゃ弱い。負けた、猛者だ。
「待って、降参するからやめて、ふふ」
むず痒さに吹き出しそうになりながら降参宣言をする。
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