ドライブの先

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 花見を終えた俺は、再びあてのないドライブに戻ることにした。知らない道を走りに走って辿り着いたのはどこかの山の峠道。 道がグネグネと曲がっている上に、夕方になると共に赤みがかった霧が出てガードレールの目視が危ういものとなっていた。 「うーん、春の夕霧と言うやつか。綺麗だな」 俺は山道特有の広い路側帯に車を停め、春の夕霧に包まれた山々をカメラに収めることにした。誰に見せる訳でもない、今日の記念である。  写真を取り終えた俺は帰路に就くことにした。さて、帰り道はどうしようか? 路側帯で切り返しを行い、来た道を引き返せば確実であるが…… 正直なところ、ドライブこそ趣味であるが切り返しは面倒臭いと考えている。  俺は不精をし、このまま前に進んで帰りたいと思った故にカーナビに尋ねてみることにした。 「この先、そのまま進めば山の麓に降りられるかな? 麓に降りた後はそのまま家に帰りたいんだけど」 〈はい。このまま進んでいただければ山の麓に出ます〉 「そうか。霧が出てるんだけど急カーブとかあったら指示出してくれる?」 〈了解しました。霧灯(フォグ・ランプ)の灯火をした上での慎重な走行を推奨します〉  俺は霧の峠道を走っていた。レースゲームに出てくるようなグネグネした急カーブの連続をカーナビの指示に従って走っていく。 〈この先、およそ50m先に急カーブです〉 〈この先、カーブが連続します〉 予想以上に夕焼けに染まった赤い霧が濃いのか、カーナビの指示がないとカーブの有無が分からなくなってしまった。早く麓に降りたいが、カーブの連続がそれをさせない。 何回目かも分からないカーブを曲がった瞬間、カーナビは指示を出してきた。 〈この先、暫く道なりです〉 ああ、これなら安心だ。俺は安堵し、(はや)る気持ちを押さえきれずにアクセルを軽く踏み込んだ。カーナビの地図も一瞥してみたのだが、指示通りに直線が続くのみ。 その途中、窓の外より黄色いスリム看板が見えたのだが「車線減少」か「徐行」の看板であると思い、素通りしてしまった。
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