ドライブの先

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 カーナビの指示はない。やけに直線が長い道だなぁ…… 俺は小首を傾げていた。 すると、霧灯(フォグ・ランプ)の光が一寸先を照らしにかかる。 赤い霧を引き裂いた光は道路の切れ目を映し出していた。 「やべっ」 俺は全力でブレーキを踏み込んだ。しかし、もう遅かった…… 車は道の切れ目へと突っ込み、道の下へと落ちていった。 道の下は奈落も同然の崖、車はそのまま崖の下へと真っ逆さま。 その落ちる最中、カーナビは信じられないことを宣っていた。 〈この先、急カーブです〉 ちきしょう! 急カーブどころか道ですらない崖の下じゃないか! ふざけるのも大概にしろ! 俺がカーナビに対して呪詛の言葉を述べていると、今日がエイプリルフールであることを思い出した。 〈エイプリルフールとは何でしょうか?〉 「毎年の四月一日だけ、嘘を()いてもいい日のことだよ」 〈そうですか。私のような機械には関係のないことですね。機械は嘘を()けませんから〉  この野郎、今日が四月一日であることをいいことに嘘吐()きやがった。四月一日の嘘は「人が不幸になるものは駄目」と説明しておけば良かったと思った瞬間にはもう手遅れ、車が崖の底に落ちて爆発すると共に俺の意識は絶たれてしまった。  人って、こんな不条理に死ぬんだな…… 愛着すら持っているカーナビ(機械)にエイプリルフールに嘘を()かれて亡くなる俺の生き様は情けないにも程がある。
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