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家に帰ってからもなんとなく落ち着かなかったのは、外で雷が鳴りだしたせいだけではない。
さっきの凛花のテンションが納得できないからだ。
私が何かしちゃったのかな、ともう一度考えてみる。
凛花とは小学校の頃からのつきあいだけど、高校までトラブルになってしまった記憶はない。昔、凛花から借りた漫画を汚して謝ったことはあったけれど、そんなレベルではないのかもしれない。
いろいろ悩んでいるところに、伊織からの連絡が来た。つきあって一ヶ月ほど経つが毎日のように連絡をくれる。マメな人だなぁ、と思っている。
ん? まさか、凛花が伊織のことを好きだった、とかそういうオチは……。
ベッドから腹筋を使って起き上がり、「いやいやいや」と私は首を横に振った。
伊織とつきあうことになった日、「よかったじゃん!」と凛花は私に言ってくれた。あの笑顔の裏にそんな思いがあったとしたら、私はどれだけ鈍感な奴なんだ。
第一、凛花の顔の好みは伊織みたいな顔じゃないだろう……。凛花は見た目がいかにも秀才型な頭のよさそうなメガネ王子的な男子が好きなはずだ。
やっぱり私のせいじゃないのか……? と考えていると部屋のドアが急に開いた。
9歳年下の弟・海斗だった。
「姉ちゃん、Reen-Hite-Inkが解散だって!」
あまりの拙さにくすりとも笑ってあげることができなかった。
「海斗……それは嘘だね」
私がReen-Hite-Inkの超がつくほどのファンと知っての嘘だったのだろうけど、どう考えても嘘にしか思えない。小学生のつく嘘だなぁと思った。
「今日は嘘ついていい日だし」
「4月1日だからって言いたいのね。でもね、海斗、嘘をつくならもっとリアリティ持たせないと」
「なんだよー、もっと本当っぽいの考える」
「エイプリルフールはもうすぐ終わるから早めにね」
そんな会話をしながらふと気づく。
そうだ、今日はエイプリルフールだ。昨日はエイプリルフールではない。
昨日の凛花のプロフィール更新は嘘じゃないか、4月1日に投稿しようとしたのを間違ったのかはよくわからない。
でも、今日の発言は嘘だとしたら?
『ごめんね、私、いなくならないから』
あの消えそうな声の言葉は、嘘だったとしたら?
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