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『はい』
8回目の電話でやっと凛花は出てくれた。
「やっと出た」
『さすがに……ね』
「遅いよ」
『しつこいよ』
そう言いながら凛花が少し笑ったような気がした。
「『いなくならないから』はエイプリルフールネタってこと?」
さっきLINEでも送りつけたけれど、まだ凛花の言葉から嘘だったとは聞いていない。
『そう……だね。よく気づいたね」
凛花が認めた。
「あれが嘘だとしたら、昨日Delaygramのプロフ更新した内容はホンモノかなって考えたらさ……イヤなストーリーしか思いつかなかったよ」
『そっか』
「なんでもっと早く言ってくれなかったの?」
私は、さっき海斗を部屋から追い出した後、凛花の家に行ってみた。
真っ暗だった。
夜だというのに灯りは1つたりともついていなかった。
塀の向こうから見えたのはカーテンもついていない窓だった。もぬけの殻というやつだった。
どう見ても引っ越した後にしか見えなかった。
『どうしても言えなくてさ』
「いつから決まってたの?」
『1月かな?』
「1月?」
そんな前のことだった?
『離婚が決まったのがそれぐらい。どっちの親についていくとしても、引っ越すことは決まっててさ。一人じゃ生きていけないし、転校するしかなかった。年度が変わるタイミングでってことでさ』
「ずっと……隠してたわけ?」
『ごめん』
凛花は、二ヶ月以上も引っ越すことを隠し続けていたのか。その間に私が伊織とつきあうことになったときも祝福してくれたのか。私が恋なんかにかまけている間、凛花はずっと悩んでたのか。私は何をしてたんだ。何を見ていたんだ。
「凛花、バカなの?」
『え?』
「私たち小学校んときからの仲じゃん。どうしてそんな大事な……こと……をさぁ……」
ダメだ、うまく話せない。声が震える。
『長い仲だから、だよ……』
凛花も声が震えていた。
『こっちだって言わなきゃ、言わなきゃって思ってたんだよ? でもさぁ、でもさぁ……言えない……し。引っ越すしかなかったし……』
電話の向こうで、凛花が泣いているのがわかった。
どうして、いま凛花が話していることが嘘じゃないんだろう。全部、嘘だよって言ってくれたらいいのに。そうすれば私は心から笑えるのに。
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