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引っ越した。
理由は転勤になったから。
「独身だから身軽でしょ?」とは部長の言葉。
「は? 普通に嫌ですが?」とは言えない。サラリーマンの悲哀。
正式な辞令が出るまでの二週間で、新しい引っ越し先を決めたり、仕事の引き継ぎをしたり。
残業の毎日。休日ものんびりできない。
「やってらんねぇぜ、くそ」心の中ではそう思うけど、言葉には出さない。
まぁ、この転勤で役職が上がり、給与も少し上がる。悪いことばかりでもない。
引っ越した先は、そこそこに人がいる町。
駅から歩いて五分くらいのアパート。家賃は以前住んでいたところの半分くらい。でも前よりも広い。しかも新築で綺麗。
引越業者が段ボール箱を次々と部屋に運ぶ。
「ありがとうございました」
作業を終えた引越業者に礼を言って見送り、振り返って積み上がった段ボール箱を見てため息。
「これ片付けるのも一苦労だな」
新しい生活が始まる。
通勤は自転車。
駅前のアパートを借りたけど、あまり意味がなかった。
あまり電車を使う人がいない。みんな自動車や自転車。都心でなければそういうものかと知る。
運転免許も持っているし、中古でもいいから自動車買った方がいいのかな? なんて思うけど、いつまでこっちにいるかわからないので、とりあえず自転車だけにしておく。
新しい職場。
ほとんど若い社員はいない。
二十代後半の俺が下から数えて何番目かの若手。
部下は、ほぼ全員が年上。
まぁ仕事なので気にしないことにする。相手は気にしているかもしれないけど知ったことか。俺が決めたことじゃない。
そうしてバタバタと落ち着かない日々を過ごし、あっという間に一ヶ月、二ヶ月が過ぎ、一年が過ぎた。
その間に彼女ができた。
出会ったきっかけは、俺の住む部屋の隣に彼女が引っ越してきたこと。
お互いに一目惚れだった。
出会って最初の一日目は挨拶だけ。
翌日もゴミ出しやら何やら、いろいろと顔を合わせることがあり、三日目の会社帰りに会った時は一緒に食事をした。
一ヶ月も過ぎた頃は仕事以外の時間はだいたい二人で一緒の時間を過ごした。
「お疲れさん。そろそろ帰って来て貰おうかな」とは部長の言葉。
「は? 普通に嫌ですが?」とは言えない。サラリーマンの悲哀。
正式な辞令が出るまでの二週間で、新しい引っ越し先を決めたり、仕事の引き継ぎをしたり。
それよりも問題は彼女とのこと。
遠距離恋愛は難しい。
どうする、どうするか。悩む時間も僅かしかない。
「やってらんねぇぜ、くそ」心の中ではそう思うけど、言葉には出さない。
引っ越した先は、喧噪に溢れた街。
駅から歩いて二十分くらいのアパート。家賃は以前住んでいたところの倍以上。でも前よりも狭い。築十年以上にしては綺麗。
引越業者が段ボール箱を次々と部屋に運ぶ。
「ありがとうございました」
作業を終えた引越業者に礼を言って見送り、振り返って積み上がった段ボール箱を見てため息。
「これ片付けるのも一苦労だな」
「楽しみだね」
部屋の奥で笑う彼女。
新しい生活が始まる。
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